兵庫県のテキスタイル工場が手掛ける「jisetsu (ジセツ)」がファーストコレクションを発表

2024.09.24

兵庫県西脇市には200年以上受け継がれている伝統工芸がある。糸を先に染め、染め上がった糸で柄を織っていく播州織だ。

 東播染工(とうばんせんこう)は、この西脇市で播州織という伝統技術を守り続け、日本で唯一企画から染色・織り・加工まで一貫して行うテキスタイル工場である。

そんな地場産業を支えてきた、東播染工が手掛けるアパレルブランド「jisetsu(ジセツファーストコレクション」の展示を、SAS®イベントスペースにて行った。

世界で愛されている播州織

播州織の特徴は、糸の状態から染め上げるので、繰り返し使用しても色があせにくく、丈夫でいて肌触りのよい生地が仕上がる。色のついた細い糸を縦と横に使って織り上げるので、きめ細かく、繊細で複雑な柄をつくることができる。

播州織は、品質が高く表現の幅があることから、国内ブランドのみならず海外ブランドからのリクエストも多く、長く愛される上質な生地として世界中で活躍している。

テキスタイル工場「東播染工」の挑戦

東播染工もこれまで、「ブルックス・ブラザーズ(Brooks Brothers)」など海外のハイブランドへ生地を製造してきた。

しかしながら、有名ブランドに採用されても日本の技術でつくられた生地であると、買い手に伝わることはない。播州織だけでなく、日本製の上質な生地が海外ブランドの製品となり、ファッション産業に貢献していることはあまり認知されていない。

そして、播州織の生産量は1980年をピークに、為替や安価な海外製品の影響を受け減少傾向にあるのも現実だ。

「自分たちのものづくりを知って欲しい。日本の布を日本の人にも、もっと知って欲しい。」

そんな想いからテキスタイル工場自らアパレルブランド「jisetsu(ジセツ)」を立ち上げた。

jisetsu 2025 Spring/Summerファーストコレクション

「jisetsu」というブランド名は、「時節(時代の流れを汲み取ったデザイン)」「自説(着る人が自分自身を説明できるような服)」「地説(ものが生まれてくる場所を伝える)」という言葉遊びから派生している。

プロダクトコンセプトは、毎日着られるベーシックなウェアであり、ファーストコレクションはシャツがキーアイテムとなっている。

シャツから始めたいと思った理由は

jisetsuが大切にしたい「心地よさ」を伝えるアイテムがシャツだという。シャツにはフォーマルさと日常性が備わっている。

jisetsuのシャツは、最上の生地で仕立てた美しさがあり、流行に左右されず着続けられる愛着がある。だからこそ日常の様々な場面で臆さず着られる安心感が生まれ、心地よさをつくり出す。

生活の中の4つのシーンをイメージ

ファーストコレクションとなる2025SSは、「就寝」「家の中」「外出」「仕事」という日常のシーンをイメージし、シャツ、パンツ、ワンピース、ジャケット、パジャマなど14型を発表。

生地は、コットン、キュプラ、リネンを用いて自社で織り上げたオリジナル生地を使用している。

コットン100%の生地、キュプラとコットンを混合した生地、リネンとコットンを混合した生地など、配合を変えたパターンを作り、5種類の生地で様々な肌触りが楽しめるコレクションである。

誰もが着られること

トップスもボトムスも全てユニセックスとなっており、どのウェアも誰もが着られることが前提となっている。そのため袖には調節できるように、袖ボタンが付いているものが多くある。

過酷な農作業にも耐えうるウェア

中には、サイズ調整のためだけでなく、服の中に虫が入らないように付けた袖ボタンもある。「NNMブルゾン」は、アメリカのファーマージャケットをサンプリングした型だ。

型名のNNMは、FFA(Future Farmers of America=アメリカ合衆国学校農業クラブ連盟)を日本に置き換えて、「日本の農業の未来」の頭文字を取っている。

誰もが着られる服として、過酷な農作業をする方々のことを想い、紫外線を防ぐ強いリネン生地を採用している。

西脇市の近郊にあるオーガニックワインを作るぶどう農家の知人や、服作りも農から始まることに、思いを馳せているのであろう。

ブランド発起人の野心

jisetsuの発起人でありデザイナーを務めるのは、ファイブフォックスでパタンナーとしてキャリアを積んできた足立直人。足立は、国内の生地の産地に足を運びながら出会った東播染工に2019年参画。

生地の産地を訪れながら、日本のテキスタイル工場が「ルイ・ヴィトン(LOIS VUITTON)」「エルメス(HERMÈS)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」に生地を卸していることを知った。自身はファッション業界にいながらもテキスタイルの産地について無知であったことから、テキスタイルとファッションが繋がらないことを危惧してきた。

ファクトリーブランドになるつもりはない

そんな経験を経て、足立はテキスタイル工場としてブランドをスタートしたが、「ファクトリーブランドになるつもりはない」と断言している。

ファーストコレクションは自社で製造した播州織を用い、肌触りや繊細な柄を楽しめることを前面に表現しているが、今後のコレクションでは、自社の生地だけでなく、ニットやデニムをかけ合わせていく可能性を示唆している。

jisetsuの由来である「時節」の文脈をなぞると、季節、時代、情勢に沿った服を作ることに重きを置いているのであろう。

本コレクションのパジャマにも使われているキュプラ100%のシャツを羽織ってみると、肌から感じ取れる生地の上質さや、矢鱈縞のような繊細な柄や優しい光沢感から、丁寧に織り上げられた生地であると実感する。

そんな生地を纏うことで、安心感や自信を得たような感覚がある。

SAS®は、jisetsuファーストコレクションの心地よさをより多くの方に体験していだくこと、そして今後のコレクションへの期待を膨らませている。

EVENT INFORMATION
Wed, Sep 18, 2024 – Fri, Sep 20, 2024
SAS® presents vol.1 「jisetsu Exhibition and SAS® Preview」
jisetsu
開催期間
2024年9月18日(水) - 9月20日(金)
営業時間
10:00 - 17:00
会場
SAS®
住所
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷3丁目56-3 B1
アクセス
JR山手線「原宿駅」竹下口より徒歩5分
東京メトロ千代田線・副都心線
「明治神宮前駅」2番出口より徒歩8分
入場料
エントランスフリー
オンラインビジネスが主流となるこの時代、「 ブランドと人々を繋げる空間 」をテーマに、プロダクトの実物展示を行うショールーミングとポップアップ/エキシビジョンなど開催可能なスペースを提供するSAS®が、2024年11月(予定)にオープンします。オープン記念として、2025年S/Sコレクションを控えた新進気鋭ブランド「jisetsu」をゲストに、jisetsu展示・受注会とSAS®内覧会を2024年9月18〜20日に同時開催。来場者には、SAS®ノベルティグッズを限定無料配布。
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BRAND INFORMATION
jisetsu (ジセツ)

“nowhere ones” 地に足つけ、心は自由であり続ける。
田舎でも都会でもない。自分が暮らすその場所で、他の誰かに憧れることでも、こうなりたいでもなく、「これがいい」と服を選び、纏うここちよさを知っている人。 どこかや何かに類することで生まれてしまう比較や焦りはそこにないから、あえて私らしさを追求するなんて声高に言わなくていい。だから肩の力を抜いていられる。 それはポジティブな無所属さ。「nowhere ones.」 どこでもない誰でもない、自由な私、そして服。それがjisetsuというブランド。